心不全の予後
心不全の予後について分かりやすく解説します。
- クリニカルシナリオからの予後予測
- 収縮期血圧からの予後予測
1.Clinical scenario:CS(クリニカルシナリオ)
CS1-5まであります。
初診時の収縮期血圧(SBP)によって概ね予後が決定されるものです。
CS1:SBP140mmHg以上
CS2:SBP100-140mmHg
CS3:SBP100mmHg以下
(CS4:急性冠症候群)
(CS5:右心不全)
CS4とCS5については分かりやすくするため説明しませんが、CS4はいわゆる心筋梗塞です。
CS1-3までが予後の良い指標になります。
CS1:予後良好
CS2: ↕
CS3:予後不良
と初診時のSBPが高いほど予後良好と言われています。
CS1:心機能は良いが、内因性のカテコラミンにより末梢血管抵抗増加するため後負荷が高くなる(Afterload mis match)
→心原性肺水腫(Central volume shift)
CS2:心機能は悪く、心臓から血液を送り出せずに腎血流低下(尿量減少)や肝血流低下(低アルブミン血症)により全身浮腫となる
→うっ血
CS3:心機能がかなり悪く、低拍出症候群により危険な状態
→ショック
詳細は、
日本循環器学会:急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_izumi_h.pdf
をご覧ください。
2.収縮期血圧(SBP)からの予後予測
縦軸が入院中の死亡率で、横軸が入院時のSBPです。
クリニカルシナリオ同様にSBPが高いほど(右にいくほど)予後が良好であることがわかります。
"血圧が低下しショック状態になるよりは、侵襲に対して生体が反応して血圧を上げれるほうが心臓の予備能がある"と考えられます
これはカテコラミンリリースが関与していると考えています。
カテコラミンリリースとは、生命の危機にさらされると、防御反応としてカテコラミンを放出される反応です。
心不全だけでなく、脳卒中後においても血圧を高く保って臓器の血流を維持しようとする生体反応です。
カテコラミンリリースの状態であるかは、
脈圧(SBP-拡張期血圧)≧SBP÷2
で評価できます。
脈圧がSBPを2で割ったものより大きければカテコラミンリリースの状態です。
クリニカルシナリオもSBPも超急性期にしか使えない指標ではありますが、
血圧測定を応用するだけで病態理解の助けになりますね。